映画『獄門島』(1977)を観る

獄門島[東宝DVD名作セレクション]

なんとなく大原麗子に逢いたくなって映画『獄門島』を見る。これは昭和五十二(1977)年の作品で、市川崑監督による金田一耕助シリーズの三作目。大原麗子は島の網元である本鬼頭家の分家の娘早苗を演じている。分家の娘ではあるが、彼女が当主不在の網元を切り盛りしている。しっかり者だが可愛らしくもある。この映画におけるヒロインといっていい存在。洋装より和装がいいな。日本の女優はきもの姿が美しい。いまの時代は知らないが。

この映画は大原麗子をはじめ女優が魅力的。すでに亡くなっている太地喜和子とか坂口良子とかにも逢えるのが嬉しい、もうすぐ旧の盆。分鬼頭〔わけきとう〕の巴を演じている太地喜和子の艶がよく、なおかつ立て板に水の台詞まわしの鮮やかなこと。島の人というより江戸っ子か。江戸っ子でもああはしゃべれないと思う。

坂口良子は床屋の娘お七役。市川崑監督はこのシリーズでちょいちょいコミカルな人物や場面を配し、陰陰滅滅になりそうな物語をそうはならず爽やかな作品に仕上げている。とくに『獄門島』は前二作に比べてそうゆう性格が強いかもしれない。坂口良子はそんな清涼剤的存在を担っている。

入船も出船も絶えて島の夏
  床屋の娘お七(坂口良子

さてこの映画、犯人を原作と変えている。原作ファンからすれば余計なことかもしれないが、犯人を変えたことで映画のシリーズ前二作と通じるものになった。それは日本のおっかさんの悲劇。子供のために過ちを犯してしまう母が描かれている。母がそうゆう過ちを犯してしまう背景に、夫や父といった男の歪んだ欲望がある。背景には、戦争も含まれるかもしれない。

舞台は敗戦後まもない昭和二十一年。瀬戸内海に浮かぶ獄門島で起こる奇妙な連続殺人事件を、ある理由から島を訪れた名探偵金田一耕助が解明する。金田一耕助はよく言われることだが、事件を説明してくれるだけで、未然に防ぐことはない。

『獄門島』は、市川崑監督による横溝正史シリーズもので、とくに夏を感じさせる作品。事件の鍵は、俳句なり。俳句は春夏秋冬の季題が肝心。春だか夏だかわからないようでは、「季違い」も浮かばれない。芭蕉の句と其角の句が事件に使われている。どの句かは、床屋の清十郎親方(三木のり平)が「わけないねぇ」と教えてくれるので、ここでは割愛する。

 

門島(1977)

〔製作〕市川崑、田中收 〔原作〕横溝正史 〔監督〕市川崑 〔脚本〕久里子亭 〔撮影〕長谷川清 〔美術〕村木忍 〔音楽〕田辺信一 〔録音〕矢野口文雄 〔照明〕佐藤幸次郎 〔編集〕池田美千子、長田千鶴子 〔監督助手〕岡田文亮

〔出演〕石坂浩二金田一耕助司葉子(勝野)大原麗子(早苗)草笛光子(お小夜)太地喜和子(巴)坂口良子(お七)浅野ゆう子(月代)加藤武(等々力警部)大滝秀治(儀兵衛)松村達雄(幸庵)上條恒彦(清水巡査)、ピーター(鵜飼)内藤武敏(与三松)、稲葉義男(村長)三谷昇(傷痍軍人)辻萬長(阪東刑事)池田秀一(了沢)小林昭二(竹蔵)、一ノ瀬康子、中村七枝子、荻野目慶子、東静子、武田洋和、仲野裕、早田文次、三木のり平(清十郎)東野英治郎(鬼頭嘉右衛門)佐分利信(了然和尚)

 

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獄門島 (角川文庫)

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