百合の香のなどかほどまで哀しきや

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きのう7月31日、フランスの女優ジャンヌ・モローの訃報あり。89歳だったとか。わりと好きな女優さんでしたから亡くなられたのは残念です。『死刑台のエレベーター』や『恋人たち』、お年を召してからも『ニキータ』とか『クロワッサンで朝食を』などに出演されていた。

映画の役者さんは、お亡くなりになられても映画でお会いすることができる。もともと実際に知っている人ではなく、これまでも映画を見て勝手に親しくなった気でいたにすぎない。実際に亡くなったとしても、いつまでも、いつでも『死刑台のエレベーター』を見ればジャンヌ・モローに逢える。

 百合の香のなどかほどまで哀しきや
   久保田万太郎

和歌や俳句には詞書が添えられることがある。久保田万太郎の句集を眺めていると、どなたかの訃報に接してという詞書がつく俳句にしばしば出くわす。この百合の香の句もそんな作品だったと思う。

詞書を知って俳句を鑑賞するのと、知らずに鑑賞しているのとでは印象が変わる。久保田万太郎を知るためには詞書は重要だけど、素人がブログに俳句を拝借して載せるだけだから、俳句本体のみで鑑賞してもバチはあたるまい、と思っている。

映画『獄門島』(1977)を観る

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なんとなく大原麗子に逢いたくなって映画『獄門島』を見る。これは昭和五十二(1977)年の作品で、市川崑監督による金田一耕助シリーズの三作目。大原麗子は島の網元である本鬼頭家の分家の娘早苗を演じている。分家の娘ではあるが、彼女が当主不在の網元を切り盛りしている。しっかり者だが可愛らしくもある。この映画におけるヒロインといっていい存在。洋装より和装がいいな。日本の女優はきもの姿が美しい。いまの時代は知らないが。

この映画は大原麗子をはじめ女優が魅力的。すでに亡くなっている太地喜和子とか坂口良子とかにも逢えるのが嬉しい、もうすぐ旧の盆。分鬼頭〔わけきとう〕の巴を演じている太地喜和子の艶がよく、なおかつ立て板に水の台詞まわしの鮮やかなこと。島の人というより江戸っ子か。江戸っ子でもああはしゃべれないと思う。

坂口良子は床屋の娘お七役。市川崑監督はこのシリーズでちょいちょいコミカルな人物や場面を配し、陰陰滅滅になりそうな物語をそうはならず爽やかな作品に仕上げている。とくに『獄門島』は前二作に比べてそうゆう性格が強いかもしれない。坂口良子はそんな清涼剤的存在を担っている。

入船も出船も絶えて島の夏
  床屋の娘お七(坂口良子

さてこの映画、犯人を原作と変えている。原作ファンからすれば余計なことかもしれないが、犯人を変えたことで映画のシリーズ前二作と通じるものになった。それは日本のおっかさんの悲劇。子供のために過ちを犯してしまう母が描かれている。母がそうゆう過ちを犯してしまう背景に、夫や父といった男の歪んだ欲望がある。背景には、戦争も含まれるかもしれない。

舞台は敗戦後まもない昭和二十一年。瀬戸内海に浮かぶ獄門島で起こる奇妙な連続殺人事件を、ある理由から島を訪れた名探偵金田一耕助が解明する。金田一耕助はよく言われることだが、事件を説明してくれるだけで、未然に防ぐことはない。

『獄門島』は、市川崑監督による横溝正史シリーズもので、とくに夏を感じさせる作品。事件の鍵は、俳句なり。俳句は春夏秋冬の季題が肝心。春だか夏だかわからないようでは、「季違い」も浮かばれない。芭蕉の句と其角の句が事件に使われている。どの句かは、床屋の清十郎親方(三木のり平)が「わけないねぇ」と教えてくれるので、ここでは割愛する。

 

門島(1977)

〔製作〕市川崑、田中收 〔原作〕横溝正史 〔監督〕市川崑 〔脚本〕久里子亭 〔撮影〕長谷川清 〔美術〕村木忍 〔音楽〕田辺信一 〔録音〕矢野口文雄 〔照明〕佐藤幸次郎 〔編集〕池田美千子、長田千鶴子 〔監督助手〕岡田文亮

〔出演〕石坂浩二金田一耕助司葉子(勝野)大原麗子(早苗)草笛光子(お小夜)太地喜和子(巴)坂口良子(お七)浅野ゆう子(月代)加藤武(等々力警部)大滝秀治(儀兵衛)松村達雄(幸庵)上條恒彦(清水巡査)、ピーター(鵜飼)内藤武敏(与三松)、稲葉義男(村長)三谷昇(傷痍軍人)辻萬長(阪東刑事)池田秀一(了沢)小林昭二(竹蔵)、一ノ瀬康子、中村七枝子、荻野目慶子、東静子、武田洋和、仲野裕、早田文次、三木のり平(清十郎)東野英治郎(鬼頭嘉右衛門)佐分利信(了然和尚)

 

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佛性は白き桔梗にこそあらめ

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現在、ダブルワークをしている桔梗之介です。貧乏ひまなしです。ま、それはともかく、昼の職場は東京都港区にあり、ここを最寄り駅から「浜松町」と呼んでいます。一方、夜の職場は東京都墨田区で最寄り駅からこちらを「業平橋」と呼んでいます。業平橋とは東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅の旧称です。

旧称業平橋は、美男の代名詞でもある在原業平を想起させる雅やかで風情があり、実際に関係があったかどうかは知りませんが素人には充分歴史を感じさせるとても素敵な良い名前だと思うので、旧称を使うなんて未練かもしれませんが、気に入っているから仕方ありません。それに、不粋にも改名した野暮な連中へのささやかな抵抗を内に秘めて、いまでも愛用させてもらっています。

さてさてこのところ、めっきりそのダブルワークが疲れるようになりました。これまでは寝れば心身ともに疲労から回復しておりましたが、今年あたりからなんとなく疲労が抜けきれてない日が増えてきたように思われます。

やはり五十歳。年齢的な側面もあるんでしょうな。ただ、いますぐ仕事をどーのこーのというわけにもいきませなんだけれど、いちおう年内を目安に、ちょっと節目をつけようかなと思案しはじめたところです。ま、実のところはどうなるか分かりませんが。

 佛性は白き桔梗にこそあらめ
   夏目漱石

ふつうの青紫の桔梗も好きですが、白い桔梗も気品があっていいものです。漱石さんは白い桔梗に仏をみましたか。僕はまだまだ、いいものだなと眺めているに過ぎません。